そーいちブログ

福岡県在住の「旅」を愛する大学生

旅で人生は変えられない⑩(アメリカ編)

前回のあらすじ

 「人生を変えるきっかけを探しに行く」

僕はそんな思いで、アメリカを旅することを決めた。

昔から憧れの地であったが、人生初のアメリカ。これから僕にはどんな出会いが待ち受けているのだろうか。

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(第10章) L.A .

太平洋を越え、アメリカ大陸が見えてきた。

時刻は現地時間の夕方。天気は快晴。窓際の座席からはしっかりと景色が見えた。相変わらずの晴れ男ぶりを発揮した。

飛行機は定刻通りの現地時間の午後7時に着陸した。

だが、まだ先は長い。

アメリカの入国審査は厳しいと評判だ。そして、ロサンゼルス空港には入国審査を受ける人で長蛇の列ができていた。

まずは、ESTA(e-VISA)の発行をするための列に並ぶ。ここは30分でいけた。

次は入国審査の列に並ぶ。ここでは2時間以上並んだ。トイレに行こうものなら、また最初から並ばねばならない。必死にトイレを我慢しながらも、懸命に順番を待った。

そして、いよいよ順番が回ってくる。

日本人ならば信頼度が高く、すぐに通過できると思っていた。

しかし、滞在先の住所、入国の目的、滞在期間、帰りの航空券の有無など詳しく質問された。今まで25ヶ国を訪れているが、アメリカの入国審査は桁違いに厳しいものであった。

金髪のガキが1人で1ヶ月以上も滞在すると言ってるだから、怪しまれるのもしょうがないか。

空港を出た時には、時刻は午後11時を回っていた。

これから僕はアナハイム近郊の小さな町に住むホストのもとに行く約束だ。

しかし、もうアナハイム行きのバスは出ないとのこと。アナハイムに行くにはもうUberしか手段がないと言われた。

Uberアナハイムまでは50ドル(5,500円)。バスの倍以上かかるがしょうがない。

車を手配して乗り込む。車の運転手は僕より5歳年上の兄ちゃんだった。救命士になるために、サンディエゴの大学で勉強しているそうだ。

彼はとてもフレンドリーですぐに仲良くなった。お互いに音楽とMLBが好きという趣味が一致して、会話が弾んだ。

1時間近く乗車していたが、あっという間にホストの家に到着した。到着したという連絡を入れると家から出てきた。

彼の名はクリス。ベトナムにルーツを持つ、アジア系アメリカ人だ。見た目は完全にベトナム人だが、アメリカ生まれアメリカ育ちだ。英語の発音もきれいだ。

彼のホスピタリティは素晴らしかった。彼は毎日、早朝5時には仕事に向かうために家を出るそうだ。僕が彼の家に到着したのは深夜過ぎ。なんと、彼は寝ずに僕の到着を待っていてくれたのだ。それに、長旅で僕が小腹をすかせているだろうと、うどんを作ってくれていた。トマトの酸味が効いたスープにパクチーが入ってアジアンテイストになった彼の手作りうどんはとても美味だった。さらに、洋服も洗濯してくれた。

どこまでクリスは良いやつなんだ。

話を聞いてみると、

「俺はアメリカ人だが、はるばる遠くから来てくれたYouには最高の思い出を作って帰ってほしい。アジアにルーツを持つ者同士だから、俺とYouは家族さ!」

ほんとに泣けてくる。遠い海の向こうにはこんな良い人がいたんだ。

僕のアメリカ生活は最高のスタートを切った。

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クリスの手作りうどん

・光と影

翌日。

クリスは仕事のため、1人で観光に出かけた。

「車社会」のアメリカにおいて、ロサンゼルスも交通の便が悪い。地下鉄や電車も一部の地域しか走っておらず、基本的に観光客の移動は、レンタカー、Uber、市バスに限られる。バスは路線も本数も少ない。車で30分で行けるところに、2時間かけて行かなければならないケースも多い。

サンタモニカにハリウッド。テレビで見た光景の連続だ。僕はロサンゼルスを楽しんでいた。

しかし、気になる点もあった。「ダウンタウンエリア」だ。ここでは、殺人や強盗、ギャングと警察の抗争が日常茶飯事だ。人が道端で死んでいても誰も気に留めないという話も聞いたことがある。

半分冗談だと思っていたが、実際に行ってみて確信した。歩道にずらっと並んだテント。奇声を上げている薬物中毒者。全身にタトゥーの入ったお兄さん達の集団。

ヨーロッパでもスラムと呼ばれる地域に行ったが、それとは比べものにならない雰囲気。殺気を感じた。

日本という平和ボケしてしまった国に住んでいる僕でもここはヤバいとすぐに感じた。

格差社会アメリカの「闇」の部分は深い。日本人が容易に足を踏み入れてはならない。

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ダウンタウンに広がるテント村

アナハイムの奇跡

クリスも仕事から戻り、夕方からは一緒に行動した。

MLB好きでもある僕は、日本人として大谷選手を絶対に観たかった。

しかし、僕がロサンゼルスにいる間、大谷選手が所属するエンゼルスは長期の遠征に出ており、残念ながら本拠地での試合はなかった。

せめてもの思い出にと、スタジアムだけは行きたいと思い、クリスに車で連れて行ってもらった。

スタジアムには灯りがついていた。なにかイベントをやっているのだろうか。とりあえず、行ってみることにした。

スタジアムでは音楽ライブが行われていた。しかも、入場料は無料だそうだ。

スタジアムの外で記念撮影ができればいいと思っていたが、中に無料で入れるのだからラッキーだ。

そして、奇跡は続いた。

グラウンドが解放され、自由に入っていいとのことだ。

こうなれば、僕は大興奮だ。まさかグラウンドの芝を踏めることになるとは。僕は大谷選手と同じ目線に立っていた。

大谷選手に会うことは叶わなかったが、大谷選手になりきることはできた。

試合がないからといってスタジアムに行くことを諦めていたら、こんな経験はできなかった。

選手目線で見るスタジアムはとても迫力があった。こんな環境で毎日最高のパフォーマンスをするメジャーリーガーの凄さが分かった。

ロサンゼルスの日々は僕にとって素晴らしいものだった。

⑪に続く

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エンゼル・スタジアムにて