旅で人生は変えられない⑯(アメリカ編)
前回のあらすじ
ブルース発祥の街・メンフィス。
(第16章) 全米最悪都市
ここはかつて自動車産業の街として栄えた。
しかし、低コスト高品質の日本自動車がアメリカの市場に多く参入したことにより、この街は衰退の一途をたどっていった。
そして、2013年には街自体が経済破綻してしまい、街の1/3の建物は廃墟と化してしまっている。
国からの再生支援もなかなか進んでいないことから、「国家に見捨てられた街」とも言われている。
人口の規模もそんなに大きくないが、犯罪率においては全米1、2位を争うほどの治安の悪さを誇っており、殺人や強盗は日常茶飯事である。
現地の人でもなかなか夜は外には出歩かないようにしているらしい。
そんな現状を自分の目で確かめるべく、僕はこの地に降りたった。
・デトロイト
デトロイトのバスターミナルに到着し、トイレに向かったが、扉が完全に破壊されており使用禁止になっていた。
さっそく手荒い歓迎を受けた。
僕が訪れたのは日曜日であったが街に人は少なく、どこか哀愁感が漂っていた。
どこのお家も窓には鉄格子がついており、玄関の扉も二重になっている。
街の中心部にも郊外にも廃墟化したお家や教会などがたくさんあり、非常に不気味だ。
どうやら噂は本当のようだった。
治安が悪いにしては路上生活者が少ないというよりもむしろいないと言っても過言ではない。廃墟がこんなにもたくさんあるものだから、ホームレスたちはそこに住み着いているそうだ。
デトロイト。やっぱり興味本位で来るような街ではなかったようだ。
しかし、一部では廃墟をレストランに改装したり、リフォームしている所もあった。
元廃墟のレストランには多くの若者が昼間から集まり、ランチやお酒を楽しんでいた。
デトロイトの人々はみんな口を揃えてこう言う。
「徐々に良くなっている」
まだまだ課題が山積みのデトロイト。
しかし、多くの人々は街の再生を信じ、前を向いていた。
デトロイトの街が過去の輝きを取り戻す日はそう遠くないのかもしれない。
⑰に続く