旅で人生は変えられない⑨
前回のあらすじ
旅に出るならば、事前に十分な下調べをして行くべきだ。下調べをしておくことで何気ない風景も違って見える。
イタリアで僕は学んだ。そしてローマ滞在で僕のヨーロッパ旅は終わりを迎えた。
旅は自分自身のなかでは大成功だった。自信をつけることができた。
そしてまた、僕は日常へと戻ったのであった。
(第9章) アメリカン・ドリーム
僕は退屈だった。
ヨーロッパで確かな自信をつけてきたはずなのに。
なのに、僕はなぜか退化していた。
大学にも行かなくなった。すべてが面倒だった。家にいてYouTubeを見て、たまにアルバイトに行く。
こうなってしまったのには色々な事情があるが、僕にはもう数ヶ月前の勢いがなかった。覇気がなかった。
すべてがどうでもよくなっていた。
・アメリカ横断
過ぎていくだけの日々のなかで僕はとある1つの動画に出会った。某YouTuber「アメリカ横断」の動画だ。なぜか僕はこれをずっとぶっ通しで見ていた。
そして僕は思った。
「旅に出たい」
なぜかその日からアメリカ横断のことばかりを考えていた。
「俺、久しぶりにワクワクしてる!」
迷いはなかった。アメリカ横断をしたいと思った次の日には、ロサンゼルス行きの航空券を買ってしまった。
「アメリカに行けばきっと何かある」
子どもじみた考えではあるが、アメリカで何か人生が変わるような運命の出会いが待っている。根拠のない自信があった。
僕はただ探していただけさ、「きっかけ」を。
アメリカに滞在するのは1か月と決めた。しかし、物価の高いアメリカでは1か月滞在するのにはかなりのお金がかかる。
でも僕には旅の知識があった。
航空券から移動費まで全ての費用を30万円以内で抑える採算がついた。
旅のテーマは「現地の人との触れ合い」
世界には無料で旅人を自宅に泊めてくれるコミュニティがある。僕はそこでメールを送りまくった。日本を出発する前にはいくつか受け入れ先が見つかっていた。
あとはコミュニケーションを図るために、1か月で必死に英語を勉強した。もともと英語は得意であったが、出発前にはビジネスレベルまでに上達していたと思う。
いよいよ出発だ。
人生を変えるつもりだった僕はアドレナリン全開でワクワクしていた。
荷物は大きめのバックパックと小さめのショルダーバッグ。いつものスタイルだ。
ロサンゼルスへの道は長い。最安値の航空券を買っていたため、3回も乗り継ぎがある。
まずは韓国。韓国には丸一日滞在した。
お次は中国・厦門。ここからはいよいよインターネットが使えなくなる。たった数時間の待機だったから苦ではなかった。
お次はまたしても中国・青島。ここで中国の出国手続きをした。
次に飛行機に乗れば、もうアメリカだ。中国では現地時間が深夜を過ぎていたが、まったく眠くなんてなかった。
ロサンゼルス行きの搭乗アナウンスが流れる。飛行機はもちろん大型機だ。
定刻通りに飛行機は離陸した。
アメリカン・ドリームを追いかけた僕の旅がいよいよスタートした。
⑩に続く